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名古屋地方裁判所 昭和57年(わ)362号 判決

裁判所書記官

野々山忠夫

本籍

福井県鯖江市上深江町七七番地

住居

愛知県瀬戸市下半田川町一六八三番地の八

病院経営(医師)

早川ア井

大正一五年一二月一一日生

本籍

長崎県長崎市竹ノ久保町二七二番地

住居

愛知県瀬戸市下半田川町一六八三番地の八

病院事務局長

安藤虎正

昭和四年一月二五日生

右両名に対する各所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官北岡英男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人早川ア井を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に、被告人安藤虎正を懲役一年に処する。

被告人早川ア井においてその罰金を完納することができないときは、金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人両名に対し、この裁判の確定した日から三年間、それぞれその懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人早川ア井は、愛知県瀬戸市下半田川町一六八三番地の八所在の精神病院「愛治病院」の院長として同病院を経営し、被告人安藤虎正は、同病院の事務局長として経理事務を統括するものであるが、被告人両名は、共謀の上、被告人早川ア井の所得税を免れようと企て、経費の水増し、特定医薬品の在庫除外等の方法により所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和五三年分の実際の所得金額は一億〇〇七一万六八七六円であって、これに対する所得税額が四九六七万九一〇〇円であるのに、同五四年三月一五日、同市熊野町七六番地の一所在の尾張瀬戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額は七〇四九万六五一七円で、これに対する所得税額が二七五二万八〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正規の所得税額との差額二二一五万一一〇〇円の所得税を免れ、

第二  同五四年分の実際の所得金額は七九九七万一三一七円であって、これに対する所得税額が三三一三万四二〇〇円であるのに、同五五年三月一五日、前記尾張瀬戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三三一六万五八九四円で、これに対する所得税額が二〇九万六八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により正規の所得税額との差額三一〇三万七四〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

一、被告人両名の当公判廷における各供述

一、被告人早川ア井作成の上申書

一、被告人早川ア井の大蔵事務官に対する質問てん末書八通

一、被告人早川ア井の検察官に対する供述調書二通

一、被告人安藤虎正作成の上申書五通

一、被告人安藤虎正の大蔵事務官に対する質問てん末書一二通

一、被告人安藤虎正の検察官に対する供述調書二通

一、國島明作成の証明書七通

一、山越洋司作成の査察官調査書六通

一、亀井貞夫、早川芳男及び山田清(二通)作成の各上申書

一、山田清(四通)、早川芳男(二通)、小林良治、渡辺敦子及び若尾泰昭の大蔵事務官に対する各質問てん末書

(法令の適用)

被告人両名の判示各行為は、いずれも刑法六〇条、昭和五六年五月二七日法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一項に該当するところ、被告人早川ア井に対しては情状によりいずれも所定刑中懲役刑及び罰金刑(同法二三八条二項の制限内)の併科刑を選択し、被告人安藤虎正に対してはいずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、被告人早川ア井をその刑期及び金額の範囲内で、懲役一年及び罰金一二〇〇万円に、被告人安藤虎正をその刑期の範囲内で懲役一年にそれぞれ処し、被告人早川ア井において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用して、被告人両名に対し、この裁判の確定した日から三年間、それぞれその懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩瀬徹)

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